以前にも易経の文章において解釈が大変難しい事に触れたことがありますが、先日、江戸時代中期の儒学者である新井白蛾がまとめた易経の本を読みました。そこには、易経の解釈を無視した独自の解釈が多数書かれていました。
例えば、「地雷復(ちらいふく)」。
教科書通りの解釈ですと、元に戻るや再スタートなどの意味で扱いますが、新井白蛾の場合、陰と陽の形から「地を掘って宝を得る象」と述べています。
また、「山天大畜(さんてんたいちく)」の場合は、通常ですと大いに蓄え、しかるべき時に進め。つまり充電を重ねたうえで物事を成し遂げよとの意味ですが、新井白蛾の場合は「金、岩中に有る象」と金脈の存在を指し示す内容となっています。江戸時代ですと、このような解釈が人々に受け入れやすかったのでしょう。
易経の知る上での大事なキーワードに「変易(へんえき)」と言うものがあります。これは、易たるものは常に変化を続けていると言う事です。今、巷に溢れている易経の本は、古人が研究を重ね当時としては最高の解釈が添えられた内容となっています。しかし、インターネットなど情報通信が発達した現代では、時代にそぐわない考え方も多数混じっています。今を生きる私たちは、正に現代に合った易経の解釈を見出すタイミングに来ているのかもしれません。それが易経の変易の意味を成し、古人の残した易経をキチンとした形で後世に伝える事になるのかと思います。
記:谷口 尚煕