教養を織り交ぜた俳人

皆さんはこの文章を読めますか?
「乾ヤ兌 坎震離ス 艮坤巽」
まずは読めないでしょう。笑
もし読めたのなら、相当の教養人です。
この文章、実は俳句なのです。
「そらやあき みずゆりはなす やまおろし」
この俳句、易経の八卦を巧みに用いて構成したもので
乾は高いものを指し、ここでは空。
兌は季節では金の五行で秋。
坎は五行で水。震は動く意味の揺れ。
離はそのまま離れるとし、艮は山。
坤は地でその上に風が吹く様で山おろしとしました。
この俳句の作成者は松尾芭蕉の高弟である宝井其角の作です。
今では教養と言えば学校で学ぶものと思われますが、
明治以前は教育施設の充実は乏しく、教養は支配層に限られ、
嗜みとして易経を含む四書五経が正に中心となっていました。
其角自身も医者の家系に生まれており、教養との接点は
多い環境だったのでしょう。
その片鱗が、この句にも表れていますし、其角の俳号は
易経六十四卦の火地晋の上爻から取られており、俳人としての
意気込みが分かりますし、教養の深さも伺えますね。

記:谷口 尚熙