この卦は天の下で轟く雷、つまり大自然を表しています。太陽はいつもたんたんと分け隔てなく万人に恩恵を施してくれています。人も大自然に習いなさいと説いています。
易を立ててこの卦を得れば、残念ながらまず望みは叶う事はありません。「良くなりたい」という人間なら誰もが期待する事さえ通じない時なのです。何故ならそこには必ず“欲“があるからです。すべてにおいて成り行きに任せるしかありません。いま為すべき事をして受け身に徹する時です。
この天雷无妄の卦の爻辞には大変興味深いものがあります。「田畑は開墾せずして土が肥えて収穫がある」とあります。人為的に何かすることよりもただ自然の力に任せればよいと説いています。それを実践した人が「奇跡のリンゴ」を育てた木村秋則さんですね。
さらに「薬を用いなくても病は治る」と言っています。本来人間には自然治癒力が備わっているので自分の力で健康になる事ができるのです。現代では名医が9割の病は自分で治せると明言して、薬漬けに警鐘を鳴らしています。
五千年前にできた易経がたとえ話とは言え、物事の核心をついていることにはただ驚くばかりです。
記:丹羽央璃