もし易で今日の運勢を占って「地山謙」を得れば、今日一日謙虚に過ごしなさいよ、という天からのメッセージと解釈します。謙虚さは「実るほど頭が下がる稲穂かな」という諺にもあるように古来より最も高い徳とされています。
易経ではどの卦にも「君子」と「小人」に分けて説かれています。君子とは大人(たいじん)とも言い道理の解った人を表しており、小人(しょうじん)とは道理の解らない未熟な人と考える事ができます。この卦の卦辞は「謙は亨る。君子終わりあり。吉。」とあります。謙虚であれば君子は終わりを全うする事ができるという意味です。
しかし易経の説く謙とは、私たちが普通に考える処世術のひとつとしてものとは、ちょっと違います。うわべだけへりくだった謙遜とは違うのです。大人君子は志が高いのでどれだけ才能があり功績が大きくても、まだまだ足りない事を知っており、自分が偉いとは全く思っていない。従って自然と謙虚になってしまう、ならざるを得ないと言っています。
ひとつ前の盛運を表す「火天大有」に続いてこの「地山謙」が配されています。大有はお金にも人にも恵まれる大変良い時ですが、「盈つれば欠ける」のは世の常です。良い時を少しでも長く保つ為には謙虚さを忘れてはならない、と戒めているのです。うまくいっている時ほど脇を締めろと易経は教えてくれています。
丹羽央璃