易経:地山謙

今月5日、東京ドームで国民栄誉賞の表彰式が行われました。

読売ジャイアンツ終身名誉監督として現在でも絶大な人気を誇る長嶋茂雄氏、巨人から大リーガーになり今年現役引退した松井秀喜氏、師弟関係にあるお二人の授賞に巨人ファンならずとも感動されたのではないのでしょうか。

師弟としての現役時代には、毎日のように素振りを指導し地道に励んでいたそうです。

お互いに認め合い信頼関係が築けたことが素晴らしい結果をもたらしたことは言うまでもなく、国民に愛され社会に希望を与えるに相応しい受賞だと思います。

当日は松井氏が提案して長嶋氏が選んだおそろいの濃紺のスーツにストライプのシャツ、水玉のネクタイを着用し、絆の深さを感じました。

受賞時、長嶋氏が額に入った重そうな表彰状を受け取る場面では松井氏がさりげなく斜め後ろから軽く支える姿勢に、私はふと易経の十五卦「地山謙」を思い浮かべました。

地山謙

「地山謙」とは地の中に山が没した象であり、高尚なものが頭を低くしていることを表しています。

「謙」は自分を低くみなして人にゆずること、へりくだるという意味があります。

表向きには謙虚で控えめな動作ではありますが、強かな勢いがあり心服させる力があります。

英姿をひけらかすことなくただ謙虚に長嶋氏の後を歩む姿は、より偉大な風貌を醸し出していました。

受賞に関して「ただただ恐縮している。王さんの本塁打数や衣笠さんの連続試合出場のように世界記録をつくったわけでもない。長嶋さんのように日本中の方々を情熱的にさせたわけでもない。誇れるのは日米のすばらしいチームでプレーし、すばらしい指導者、チームメイト、ファンに恵まれたこと。」と述べており、秀逸を極めた発言に感動しました。

脳梗塞を患い表舞台に立つことのなかった長嶋氏の堂々とした雄姿、言葉の一つにも重さがあり多くの人に夢と元気を与える存在であることは変わらず、それ以上の輝きを放っていました。

偉大なお二人が揃っての始球式は、かつての栄光を呼び起こし魅了させられた瞬間でもありました。

「地山謙」の精神こそが現在において最も見直され、幅広い分野で外面だけではなく内面を充実させることが大切であるとことを感じます。